無人ヘリコプターによる農薬の空中散布に係る安全ガイドライン
ポイント
〇農用地等における無人航空機による空中からの農薬、肥料、種子若しくは融雪剤等の散布(空中散布)における農薬の安全使用に関する遵守事項として、「無人ヘリコプターによる農薬の空中散布に係る安全ガイドライン」が定められています。
〇同ガイドラインには、使用者が農薬取締法等関係法令を遵守し、安全かつ適正な農薬使用を行うための農薬の空中散布の目安を示しています。
〇空中散布計画書及び散布実績報告書については、電子メールによる提出が認められます。
★「空中散布における無人航空機利用技術指導指針」は廃止されました。
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第1 趣旨
農薬を使用する者は、農薬取締法(昭和 23 年法律第 82 号。以下「法」という。)第 25 条第1項に基づき定められている農薬を使用する者が遵守すべき基準を定める省令(平成 15 年農林水産省・環境省令第5号。以下「省令」という。)に基づき、農作物や人畜、周辺環境等に危被害を及ぼさないようにする責務を有するとともに、関係通知に沿った安全かつ適正な使用に努める必要がある。また、農薬を使用する者は、法第 27 条に基づき、農薬の安全かつ適正な使用に関する知識と理解を深めるように努めなければならない。
このことから、無人ヘリコプター(ほぼ垂直な軸回りに回転する三つ以上の回転翼によって主な揚力及び推進力を得る回転翼無人航空機以外の回転翼無人航空機をいう。)による農薬の空中散布を行う者が、安全かつ適正な農薬使用を行うために参考とすることができる目安を示すため、本ガイドラインを定める。
第2 空中散布の実施
1 空中散布の計画
(1)実施主体(防除実施者及び防除を自らは行わずに他者に委託する者。以下同じ。)は、空中散布の実施区域周辺を含む地理的状況(住宅地、公共施設、水道水源、蜂、蚕、魚介類の養殖場等に近接しているかなど)、耕作状況(収穫時期の近い農作物や有機農産物の生産ほ場が近接しているかなど)等の作業環境を十分に勘案し、実施区域及び実施除外区域の設定、散布薬剤の種類及び剤型の選定(粒剤、微粒剤等の⾶散の少ない剤型)等の空中散布の計画について検討を行い、実施場所、実施予定月日、作物名、散布農薬名、10a当たりの使用量又は希釈倍数等について記載した空中散布計画書(別記様式1)を作成する。
なお、3に規定する対応により危被害を防止することができないおそれがある場合は、空中散布の計画を見直す。
(2)空中散布の作業を他者に委託する場合は、防除委託者は、防除実施者と十分に連携して空中散布の計画を検討する。
(3)空中散布を行う実施者は、(1)の空中散布計画書を、空中散布を実施する月の前月末までに、空中散布の実施区域内の都道府県農薬指導部局に届け出ること。当該届出については、電子メールによる提出を可能とする。
(4)都道府県農薬指導部局は、(3)により空中散布計画書の届出があった場合は、当該計画の記載に不備がないことを確認した上で、地方農政局消費・安全部安全管理課(北海道にあっては直接。沖縄県にあっては内閣府沖縄総合事務局農林水産部消費・安全課。)を経由して、農林水産省消費・安全局植物防疫課(以下「植物防疫課」という。)に提出すること。
(5)都道府県農薬指導部局は、(3)により届出のあった空中散布計画書により、管内の空中散布の計画を把握し、安全かつ適正に実施されるよう、地域の実情に応じた指導を行うこと。
(6)都道府県農薬指導部局は、実施主体と養蜂家との間における情報共有の徹底を図り、空中散布の実施による蜜蜂被害の発生を防止するため、(3)により届出のあった空中散布計画書を都道府県の畜産担当と共有すること。
また、都道府県の畜産担当は、養蜂組合等の協力を得て、当該情報のうち必要な情報(農薬散布の実施予定月日、実施場所、作物名、散布農薬名等)を整理し、個々の養蜂家に対し、情報提供すること。
なお、地域の実情に応じ、より適切な情報共有手段を講じることが可能であれば、上記の限りではない。
2 空中散布の実施に関する情報提供
(1)空中散布の実施区域及びその周辺に学校、病院等の公共施設、家屋、蜜蜂の巣箱、有機農業が行われているほ場等がある場合、実施主体は、危被害防止対策として、当該施設の管理者及び利用者、居住者、養蜂家、有機農業に取り組む農家等に対し、農薬を散布しようとする日時、農薬使用の目的、使用農薬の種類及び実施主体の連絡先を十分な時間的余裕を持って情報提供し、必要に応じて日時を調整する。
(2)天候等の事情により空中散布の日時等に変更が生じる場合、実施主体は、変更に係る事項について情報提供を行う。
(3)空中散布の実施区域周辺において人の往来が想定される場合、実施主体は、作業中の実施区域内への進入を防止するため、告知、表示等により空中散布の実施について情報提供を行うなどの必要な措置を講ずる。
3 実施時に留意する事項
(1)実施主体は、操縦者、補助者(無人ヘリコプターの飛行状況及び周辺区域の変化等を監視し、的確な誘導を行うとともに、飛行経路の直下及びその周辺に第三者が立ち入らないよう注意喚起を行い、操縦者を補助する者)等の関係者及び周辺環境等への影響に十分配慮し、風下から散布を開始する横風散布を基本に飛行経路を設定する。
(2)操縦者は、あらかじめ機体等メーカーが作成した取扱説明書等により、無人ヘリコプター及び散布装置に関する機能及び性能について理解する。
(3)操縦者は、第4の3(1)により機体等メーカーが取扱説明書等に記載した散布方法(飛行速度、飛行高度、飛行間隔及び最大風速。別添参照。)を参考に散布を⾏う。
(4)(3)において、機体等メーカーによる散布方法が設定されておらず、取扱説明書等に記載がない場合は、無人ヘリコプターの標準的な散布方法として策定された、以下の散布方法により実施する。
・ 飛行高度は、作物上3〜4m以下。
・ 散布時の⾵速は、地上 1.5mにおいて3m/s以下。
・ 飛行速度及び飛行間隔は、機体の飛行諸元を参考に農薬の散布状況を随時確認し、適切に加減する。
(5)操縦者は、散布の際、農薬の散布状況及び気象条件の変化を随時確認しながら、農薬ラベルに表示される使用方法(単位面積当たりの使用量、希釈倍数等)を遵守し、散布区域外への飛散(以下「ドリフト」という。)が起こらないよう十分に注意する。
(6)ドリフト等を防ぐため、架線等の危険個所、実施除外区域、飛行経路及び操縦者、補助者等の経路をあらかじめ実地確認するなど、実施区域及びその周辺の状況把握に努めるとともに、必要に応じて危険個所及び実施除外区域を明示しておく。
(7)実施主体は、散布装置については、適正に散布できること(所定の吐出量において間欠的ではないことなど)を使用前に確認するとともに、適時、その点検を⾏う。
(8)周辺農作物の収穫時期が近い場合、実施区域周辺において有機農業が行われている場合又は学校、病院等の公共施設、家屋、水道水源若しくは蜂、蚕、魚介類の養殖場等が近い場合など、農薬の飛散により危被害を与える可能性が高い場合には、状況に応じて、無風又は風が弱い天候の日や時間帯の選択、使用農薬の種類の変更、飛散が少ない剤型の農薬の選択等の対応を検討するなど、農薬が飛散しないよう細心の注意を払う。
(9)強風により散布作業が困難であると判断される場合には、無理に作業を続行せず、気象条件が安定するまで待機する。
(10)操縦者、補助者等の農薬暴露を回避するため、特に次の事項に留意する。
ア 操縦者、補助者等は、防護装備を着用すること。
イ 空中散布の実施中において、操縦者、補助者等は農薬の危被害防止のため連携すること。
(11)作業終了後、散布装置(タンク、配管、ノズル等)は十分に洗浄し、洗浄液、配管内の残液等は周辺に影響を与えないよう安全に処理する。
(12)実施主体は、空中散布の実施により、農業、漁業その他の事業に被害が発生し、又は周囲の自然環境若しくは生活環境に悪影響が生じた場合は、直ちに当該区域での実施を中止し、その原因の究明に努めるとともに、適切な事後処理を⾏う。
4 空中散布の実績
(1)実施主体は、空中散布を実施した場合は、速やかに実施場所、実施月日、作物名、散布農薬名、10a当たりの使用量又は希釈倍数等について記載した実績報告書(別記様式2)を作成し、空中散布の実施区域内の都道府県農薬指導部局に提出すること。なお、当該報告については、電子メールによる提出を可能とする。
(2)都道府県農薬指導部局は、(1)により実績報告書の提出があった場合は、記載に不備がないことを確認した上で、地方農政局消費・安全部安全管理課(北海道にあっては直接。沖縄県にあっては内閣府沖縄総合事務局農林水産部消費・安全課。)を経由して、毎年4月から翌年3月までの実績を翌年4月末までに植物防疫課に提出すること。
(3)植物防疫課は、(2)により実績報告書の提出があった場合は、これを取りまとめ、安全かつ適正な空中散布が実施されているかどうかを確認すること。
提出先
第3 事故発生時の対応
空中散布を実施した場合の事故発生時の対応については、次のとおり実施する。
1 事故の類型
事故の類型は、以下のとおりとする。
(1)農薬事故
空中散布中の農薬のドリフト、流出等の農薬事故
(2)その他
無⼈ヘリコプターの飛行による人の死傷、第三者の物件の損傷、飛行時における機体の紛失又は航空機との衝突若しくは接近事案
2 事故報告書の提出
1(1)に規定する事故が発生した場合は、実施主体は、別記様式3の事故報告書を作成し、実施区域内の都道府県農薬指導部局に提出する。
3 事故報告書の作成
事故報告書は、事故発生後直ちに第1報(事故の概要、初動対応等)を、事故発生から1ヶ月以内に最終報(事故の詳細、被害状況、事故原因、再発防止策の策定)をそれぞれ作成すること。なお、空中散布の作業を他者に委託した場合は、防除委託者は、防除実施者と十分連携して当該事故報告書を作成する。
4 都道府県農薬指導部局の対応
都道府県農薬指導部局は2により事故報告書の提出があった場合は、記載に不備がないことを確認し、地方農政局消費・安全部安全管理課(北海道にあっては直接。沖縄県にあっては内閣府沖縄総合事務局農林水産部消費・安全課。)を経由して、植物防疫課に当該事故報告書を提出する。
5 植物防疫課の対応
植物防疫課は、4により事故報告書の提出があった場合は、これを取りまとめ、都道府県等の協力を得て、空中散布における安全対策を検討する。また、関係機関との間で、当該検討結果に係る情報を共有するとともに、実施主体に対し、再発防止を図るよう指示する。
6 事故報告の提供
植物防疫課は、5により取りまとめた事故報告を地方航空局保安部運用課に提供する。
7 地方航空局への報告
1(2)に該当する事故が発生した場合、実施主体は、直ちに以下の飛行の許可等を行った地方航空局保安部運用課又は空港事務所まで報告する。なお、夜間等の執務時間外における報告については、24 時間運用されている最寄りの空港事務所に連絡を行う。
〇東京航空局保安部運用課:03-6685-8005
〇大阪航空局保安部運用課 :06-6949-6609
〇最寄りの空港事務所(航空局標準飛行マニュアル(空中散布)を参照。執務時間外は、飛行させた都道府県に対応する24時間対応の空港事務所へ連絡する。)
★無人航空機による事故等の情報提供先一覧
第4 関係機関の役割
空中散布に関係する機関は、次の役割を果たす。
1 植物防疫課
(1)空中散布の安全かつ適正な実施のために必要な情報及び資料の収集及び提供を行うこと。
(2)空中散布の円滑な実施及び事故発生時における迅速かつ的確な対応のため、関係機関との間で連絡体制を整備すること。
2 都道府県
(1)実施主体に対し、1(1)により提供を受けた情報及び資料その他空中散布に関する技術的情報を提供すること。
(2)実施主体から事故に関する情報が提出された場合には、安全かつ適正な空中散布の実施のための指導及び助言を行うこと。
3 機体等メーカー
(1)機体・散布装置の使用条件(対象農作物、農薬の剤型等)ごとの散布方法に関する情報について、取扱説明書等に記載するなど、使用者が把握しやすい手段により情報提供すること。散布方法の設定に当たっては、落下分散性能の把握、ドリフト状況の把握等の結果から設定するとともに、その根拠となった試験結果(試験条件を含む)を Web サイト等で公表するよう努めること。
(2)1(1)により提供を受けた情報及び資料その他空中散布に関する技術的情報を使用者に提供するとともに、使用者からの照会に対応する窓口を整備すること。
参照
農林水産省
〇農薬を使用する者が遵守すべき基準を定める省令
〇無人ヘリコプターによる農薬の空中散布に係る安全ガイドライン
〇無人ヘリコプターの空中散布計画書及び実績報告書の提出先
〇無人航空機(無人ヘリコプター等)による農薬等の空中散布に関する情報
〇無人航空機による農薬等の空中散布に関するQ&A
農林水産航空協会
弊所HP
〇農薬・肥料・種子・融雪剤等の空中散布
〇航空局標準飛行マニュアル(空中散布)
〇立入管理区画の設定
〇無人ヘリコプターによる農薬の空中散布に係る安全ガイドライン
〇無人マルチローターによる農薬の空中散布に係る安全ガイドライン
〇空中散布等を目的とした無人航空機の飛行に関する許可・承認の取扱いについて(両局長通知)
〇登録代行機関
〇ドローンで使用可能な農薬
〇【廃止】空中散布における無人航空機利用技術指導指針
◆初めての方は「5分でわかる!ドローン規制の全体像」よりご覧ください。
◆ドローンに関する規制の一覧は「トップページ」をご覧ください。
◆法規制の解説動画/相談サービス付き「ドローンの飛行申請」
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