平成30年3月29日発表 目視外補助者無し飛行
ポイント
〇国土交通省と経済産業省は、目視外飛行を「補助者無し」で行うための要件をとりまとめました(平成30年3月29日発表)。
〇離島や山間部での無人航空機による荷物配送の課題は、目視外飛行における「補助者の不在」と考えられています。
〇今回の発表は「要件のとりまとめ」に関するものであり、許可・承認の審査要領や標準飛行マニュアルの改正はなされておりません(平成30年3月29日段階)。
追記
〇平成30年9月14日改正により、許可・承認の審査要領に反映されました。
【参照】平成30年9月14日改正 許可・承認の審査要領◆目視外補助者なし飛行
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目視外補助者無し飛行の要件
全般的要件
①飛行させる場所
〇飛行させる場所は、第三者が存在する可能性が低い場所(立入管理区画がこれに該当すること。)とする。ただし、飛行経路を設定するうえでやむをえない場合であって、幹線道路・鉄道や都市部以外の交通量が少ない道路・鉄道を横切る飛行(道路や鉄道の管理者が主体的又は協力して飛行させる場合はこの限りではない。)、人口集中地区(DID)外の家屋上空であって離着陸時等の一時的な飛行に限り可能とする。
(第三者が存在する可能性が低い場所)
山、海水域、河川・湖沼、森林、農用地、ゴルフ場又はこれらに類するもの。
〇飛行高度は、通常有人機が飛行しない150m未満でかつ制限表面未満とする。
②機体の信頼性の確保
〇想定される運用で十分な飛行実績を有すること。
③不測の事態への適切な対応
〇飛行中にモーター不具合等の不測の事態が発生した場合に備え、全ての飛行系路上において地上の人や物件に危害を与えずに着陸・着水ができる場所をあらかじめ選定するとともに、緊急時の実施手順を定めていること。
〇飛行前に、飛行経路又はその周辺が適切に安全対策を講じることができる場所であることを現場確認すること。
個別要件
①第三者の立入管理
<第三者の立入りを管理する対象範囲の設定>
〇無人航空機が落下しうる範囲を考慮し、立入管理区画を設定すること。
〇当該範囲は、メーカーが算出・保障した距離又は機体の性能・形状、運用方法(飛行高度、速度等)等を踏まえて落下範囲が最大となる条件下で算出した距離とすること。なお、メーカーにより適切に評価されたパラシュート等の第三者に危害を加えないことが保証された装置を使用する場合はこの限りでない。
<立入管理区画又は機上装置・地上設備の要件>
以下のいずれかの要件を満たすこと。
〇機体又は地上に、常に進行方向の飛行経路下に第三者が立ち入る兆候を確認できるカメラ等を装備又は設置し、操縦者等が当該情報を確認し、進行方向の飛行経路下に第三者が立ち入る可能性が判明した場合は即座に回避すること。
〇立入管理区画に看板等の物理的な目印を施し、第三者等への注意喚起を行うとともに、問い合わせ先を明示した上でインターネットやポスターにより当該事実を近隣住民、地域関係者などに対し広く周知するなど、当該区画の性質に応じて、第三者が立ち入らないための対策を行うこと。
また、立入管理区画に道路、鉄道、家屋上空等、第三者が存在する可能性を排除できない場所が含まれる場合には、追加の第三者の立入管理方法を講じること。
(追加の立入管理方法の具体例)
◇立入管理区画に道路が含まれる場合…無人航空機の飛行中に歩行者、自転車又は自動車等が当該区画に入ることが予想される場合は、当該場所に部分的にカメラ又は補助者を設置し、その場に応じて適切な対策(飛行を中止、経路の変更等)をとる。
◇立入管理区画に鉄道が含まれる場合…鉄道事業者との調整の上、鉄道が運行する時間帯には飛行させない。
◇立入管理区画に家屋が含まれる場合…当該家屋の住民や関係者に飛行日時等について事前に個別に説明し、了解を得るとともに、看板などにおいて日時等を掲示した上で飛行させる。
②有人機等の監視
<機上装置・地上設備等の要件>
〇航空機からの視認をできるだけ容易にするため、機体に灯火を装備すること又は飛行時に機体を認識しやすい塗色を行うこと。
〇以下のいずれかを満たすこと。
(a)飛行前に、飛行経路周辺に関係する有人機の運行者(関係機関)に対し飛行予定を周知するとともに有人機の飛行日時・経路等を確認の上、有人機との接近のリスクがある場合は飛行の自粛や飛行計画の変更等の安全措置を講じること。
特に、関係機関のうちドクターヘリの運行者、警察及び消防機関については緊急的な有人機の運行も予想されることから、事前に無人航空機の飛行日時・場所を周知した上で、当該日時・場所において有人機を飛行する可能性がある場合は、無人航空機の運行者へ連絡することを依頼し、当該情報を受けた場合には、無人航空機の飛行の自粛、飛行計画の変更等の安全措置を講じること。
また、無人航空機を飛行させる際には、関係機関と常に連絡が取れる体制を確保すること。
(b)機体又は地上に、常に飛行経路周辺を監視できるカメラ等を装備又は設置し、飛行させる空域に有人機等を確認した場合は即座に着陸する等の安全措置を講じること。
③自機の監視
<機上装置・地上設備等の要件>
〇地上において、機体の状態(位置、進路、姿勢、高度、速度等)を操縦者等が遠隔で把握できること。
〇地上において、計画上の飛行経路と現行の機体の位置の差を把握できること。
〇操縦者等は、機体の異常又は計画上の飛行経路から逸脱することが判明した場合には、計画上の飛行経路に戻す、付近の適切な場所に着陸・着水させる等適切な対策をとることができること。
④自機周辺の気象状況の監視
<機上装置・地上設備等の要件>
〇飛行経路の直下もしくはその周辺、又は機体に風速センサ、カメラ等を設置し、気象状況を操縦者等が確認できること。
〇操縦者等は、メーカーの定める機体の運用限界を超える気象状態を把握した場合には、即座に付近の適切な場所に機体を着陸・着水させる等適切な対策をとることができること。
⑤操縦者等の教育訓練
無人航空機の飛行に当たって必要な基礎的な操縦技量、補助者を配置して目視外を飛行する場合に必要な操縦技量に加え、①~④の要件に従い、適切に飛行させる操縦技量の取得のため、遠隔からの機体等の状態の把握、状況に応じた適切な判断及びこれに基づく操作等に関し座学・実技による教育訓練を、少なくとも10時間以上受けていること。
(具体例)
(a)飛行中に、カメラなどからの情報により、立入管理区画における第三者の有無等、異常状態を適切に評価できること。
(b)把握した異常状態に対し、現在の飛行地点(飛行フェーズ、周辺の地形、構造物の有無)や機体の状況(性能、不具合の有無)を踏まえて最も安全な運行方法を迅速に判断できること。
(c)判断した方法により遠隔から適切に操作できること。
その他の注意事項
〇飛行経路下及びその周辺の住民及び関係者の了解を得ていることが望ましい。
〇運行に当たっては、運行者自らが飛行方法に応じたリスクを分析し安全対策を講じることが重要である。
解説
発表の経緯
政府は、第6回官民協議会(2017年5月19日開催)にてとりまとめられた「空の産業革命に向けたロードマップ」に沿って、2018年に離島や山間部での無人航空機による荷物配送の実現を目指しています。
【参照】空の産業革命に向けたロードマップ
国土交通省と経済産業省は、2017年9月に「無人航空機の目視外及び第三者上空などでの飛行に関する検討会」(以下、「検討会」といいます。)を設置し、計6回にわたり、無人航空機の目視外皮工に求められる機体の性能、飛行させる者及び安全を確保するための体制に係る要件について検討を行ってきました。
2018年3月29日、国土交通省と経済産業省は、検討会での議論を踏まえ、無人航空機の目視外飛行に関する要件をとりまとめ、発表しました。
検討過程
現行の航空法の許可・承認の審査要領では、目視外飛行について、安全確保体制に関する追加基準として、「飛行経路全体を見渡せる位置に、無人航空機の飛行状況及び周辺の気象状況の変化等を常に監視できる補助者を配置し、補助者は操縦者が安全に飛行できるよう必要な助言を行うこと。」が定められています。
【参照】目視外飛行
そのため、目視外飛行における「補助者の不在」が、離島や山間部での無人航空機による荷物配送の課題であると考えられます。
そこで、検討会では、目視外飛行における「補助者の役割」を分析し(後述①~④参照)、補助者の役割を代替できる機体、地上設備等の基準という観点から、「目視外補助者無し飛行」の要件をとりまとめています。
もっとも、現在の無人航空機の機体、地上設備等の技術レベルでは補助者の役割を完全に担うことが困難なことから、当面は、飛行場所や使用する機体についても要件を付すものとされています。
目視外飛行における補助者の役割
検討会で分析された、目視外飛行における「補助者の役割」は以下の通りです。
以下の役割を代替できる内容として「目視外補助者無し飛行」の要件がとりまとめられました。
①第三者の立入管理
飛行経路の直下及びその周辺を常に監視し、第三者(自動車、鉄道などを含む。)が近づいた場合には、第三者又は無人航空機を飛行させる者に注意喚起を行い、第三者への衝突を回避させること。
②有人機等の監視
飛行経路周辺に有人機等がいないことを監視し、有人機等を確認した場合には操縦者等に助言し、有人機等への衝突を回避させること。
③自機の監視
飛行中の機体の飛行状況(挙動、計画上の飛行経路とのずれ、不具合発生の有無等)を常に監視し、継続的に安全運行を行うために必要な情報を適宜操縦者等に対し助言すること。
④自機の周辺の気象状況の監視
飛行中の自機の周辺の気象状況の変化を常に監視し、安全運行に必要な情報を操縦者等に対し適宜助言すること。
「目視外補助者無し飛行」の運用について
今回の発表は「要件のとりまとめ」に関するものであり、許可・承認の審査要領や標準飛行マニュアルの改正はなされておりません(平成30年3月29日段階)。
そのため、現時点で「目視外補助者無し飛行」の要件を満たす申請を行っても、現在の(目視外補助者無し飛行の要件を定めない)許可・承認審査要領に則って審査されることになり、「目視外補助者無し飛行」は承認されないものと思われます。
弊所HPの更新について
弊所HPは、現時点における「ドローンの規制内容と許可基準」を解説する点に主眼をおいています。
そのため、要件をとりまとめたに過ぎない「目視外補助者無し飛行」につきましては、弊所HPの「目視外飛行」の記事に反映しておりません。
「目視外補助者無し飛行」につきましては、許可・承認審査要領や標準飛行マニュアルに反映された段階で、弊所HPの「目視外飛行」の記事にも反映したいと考えております。
追記
平成30年9月14日付で、「無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領」に上記「目視外補助者なし飛行」を反映する改正がなされました。
そのため、弊所HPでも、「目視外飛行」において、上記改正を反映した更新を行いました。
【参照】平成30年9月14日改正 許可・承認の審査要領◆目視外補助者なし飛行
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参照
参照
○無人航空機の目視外飛行に関する要件 概要
○無人航空機の目視外飛行に関する要件 本文
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